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藤村操の自殺、華厳の滝に残した「厳頭之感」

明治36年(1903年)の今日、一人の天才が華厳の滝から身を投げました。16歳と10ヶ月でした。その名を藤村操(フジムラミサオ)といいます。

最難関であった第一高等学校(現在の東京大学)に16歳という最年少の年齢で合格してからまだ8ヶ月あまりしか経っていませんでした(当時の入学は9月からだったのです)。

彼が華厳の滝の上の木の幹に書きつけた「厳頭之感」は、名文として名高く、当時は後追い自殺が出るほどでした。

「厳頭之感」

悠々たる哉天襄、遼々たる哉古今

五尺の小躯を以て比大をはからむとす

ホレーショの哲学ついに何等のオーソリチーを価すものぞ

万有の真相は唯一言にして悉す、曰く「不可解」

我この恨を懐て煩悶終に死を決するに至る

既に厳頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし

始めて知る、大なる悲観は大なる楽観に一致するを

藤村操の哲学的自殺の背景には、ショーペンハウエルや幸田露伴の「血紅星」の影響があるといわれています。

すべてを否定するとどうなるでしょうか。自分をも否定しなければならず、待っているのは「死」のみです。

哲学的自殺を貶めようとしてか、「生存説」「失恋説」が登場しました。いずれも根拠がありません。

「生存説」は始めから相手にされませんでしたし、「失恋説」は藤村操の友人である南木性海が公表した11通の手紙によって明確に否定されています。ましてや、夏目漱石に英語の予習をしてこなくて怒られたから自殺したのではありません。

ダークネスは、藤村操の影すら見えません。

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