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オンラインカジノを日本国でプレイした場合

オンラインカジノを日本国でプレイした場合、どうなるのでしょうか。

あくまで架空の話ですが、以下検討してみました。

Aさんは、日本国内に居住する日本人です。ある日、自宅のパソコンでオンラインカジノゲーミングをしていたことが発覚し、常習賭博罪(刑法186条1項)で逮捕されてしまいました。取調べには完全黙秘を貫きました(注)が、起訴されてしまいました。そして、某地方裁判所で第1回の公判が開かれました。

(注)逮捕・勾留の時間制限

検察官は、逮捕後72時間以内に勾留請求しなければなりません(刑訴205条2項)。また、勾留は原則10日(刑訴208条1項)、延長してさらに10日(刑訴208条2項)です。よって、合計で23日間の時間制限があります。

検察官は、この23日間に公訴提起するか否かを決めなければならないのです。なお、起訴後の勾留は1ヶ月更新でできるようになります。

実際の裁判の手続きどおり述べさせていただくとかなり堅苦しくなりますので、以下おおまかに述べさせていただきます。

検察官の主張

「被告人が自宅のパーソナルコンピュータ上で、マウスをクリックした(またはキーボードのキーを叩いた)行為は、刑法186条1項(185条も同様、以下同じ)「賭博をした」にあたる。たとえ胴元が海外で合法の存在であっても、日本国内で実行行為に着手した以上、刑法1条1項により被告人が処罰されることには異論の余地がない。」

弁護人の主張

「刑法186条1項は、いわゆる必要的共犯である。相手先である胴元が海外で合法の存在である以上、客と胴元の双方を処罰することは不可能である。よって刑法186条1項は被告人に適用されない。また、そもそも刑法186条1項は、憲法13条後段に反し違憲である。」

論点1 「マウスをクリック(キーボードを叩く)行為が賭博罪の実行行為にあたるか」

よく摘発されるものにバカラ賭博があります。日本国内の場所で、実際にトランプを使い、金銭を賭けていますので、「賭博をした」ことにあたることに争いはありません。

しかし、自宅のパソコンでマウスをクリックする行為が「賭博をした」といえるのでしょうか。法益侵害の直接的・現実的危険があるのでしょうか。

もし実行行為にあたらなければ不能犯ということになります。しかし、画面上に精巧なトランプやルーレットなどが表示され、またこの点が重要なのですが、行為者が勝ったら利益を得、負けたらを損失を被ることになる事情を知っていますので、実行行為性は肯定されるでしょう。

論点2 「賭博罪は行為者の一方だけに適用することが可能か」

刑法1条1項により、刑法は日本国内で罪を犯した者すべてに適用されます。しかしながら、構成要件によっては単純に犯罪が成立しない場合があります。まさに賭博罪がそうです。

賭博罪は、必要的共犯(注1)、その中でも対向犯(注2)と解釈されています。対向犯の場合は、向かい合う双方ともが違法である必要があります。

しかし、オンラインカジノの場合、オンラインカジノ自体は完全に合法であり、そもそもオンラインカジノ側を日本国の法律では裁けないので、双方とも違法であるという状態は生じえません。

よって、構成要件の自由保障機能(注3)から合法であると結論づけたいのですが、たとえ一方が不可罰であっても処罰しても問題はないという見解もあり、合法か違法かは明確ではありません。

(注1)必要的共犯

刑法各論の規定またはその他の刑罰法規上、二人以上の者の共同の犯行を予定して、定められた犯罪のことです。大別して集団犯と対向犯があります。

必要的共犯の対概念に任意的共犯があります。これは、法律上、単独犯として予定されている犯罪を、二人以上の行為者が共同して行う場合のことをいいます。

任意的共犯は、共同正犯と狭義の共犯(加担犯)に区別され、さらに狭義の共犯(加担犯)は、教唆犯と幇助犯(従犯)に区別されます。

(注2)対向犯

向かい合う当事者が必要な犯罪です。代表的なものに賄賂罪があります(収賄側と贈賄側が存在して初めて成立する犯罪です)。対向犯の対概念として集団犯があります。

対向犯は向かい合うことが必要でしたが、集団犯は、同一方向に向かう多数の関与者が必要になります。内乱罪や騒乱罪があります。

(注3)構成要件の自由保障機能

構成要件に該当しなければ、その行為によって処罰されることはないということ。

論点3 「刑法185条、186条1項は違憲ではないか」

これが最大の論点になると思われます。たとえ賭博罪が成立しても、その条文が違憲無効となれば、被告人は無罪となります。まずギャンブルをする自由ですが、これは憲法13条後段の幸福追求権で保証されていると考えられます。

では、賭博罪の保護法益は何でしょうか?

判例は賭博罪の処罰根拠についてこう述べています。

「勤労その他正当な原因に因るのではなく、単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する」(最大判昭24.11.22)

ギャンブルすることが怠惰浪費の弊風を生ぜしめることになるのでしょうか?勤労の美風を害するのでしょうか?甚だ疑問です。

逆にギャンブルをしておかないと、ビジネスの世界で勝負時を見誤ったりすることすらあります。つまり勝負に行くとき、引くときを見極められなくなってしまうのです。

それからギャンブルをしないことの弊害が顕著なのが外交です。ポーカーや麻雀で駆け引きを培っておかないと、魑魅魍魎が跋扈する外交の世界では食い物にされてしまいます。わが国はいかがでしょうか。

こうしてみますと賭博罪の保護法益は極めて曖昧なものにならざるを得ません。ここで、ギャンブルが"Betting and Gaming Act"により合法化されているイギリスについてみてみましょう。1959年のバトラー内相の説明の和訳です。

「王室委員会は三年半にわたる審議の結果、ギャンブルは、コントロールすべきであるが、禁ずべきではないという結論に達した。国家は社会的に問題とならない限り、一般国民の楽しみを阻害すべきではない。(中略)禁止したためにかえって犯罪を生むものである」

(注)谷岡一郎「ビジネスに生かすギャンブルの鉄則」(日本経済新聞社、2001年)P33、なお和訳原文は「公営競技の現状と問題点」、1977年、100-101ページより

賭博罪が違憲か否かは、司法の判断を待たなければなりません。日本は付随的審査制を採用する国家ですから、架空ではありますが、今回のように実際に賭博罪で起訴されないと司法は判断してくれません。

みなさんが裁判官だったらどのような判決を出すでしょうか?

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