2006年2月、海外のオンラインカジノを使って賭博をしたとして、日本国内初の逮捕者が出ました。
ただし、今回の摘発はネットカジノカフェを舞台にしたもので、個人が自宅等で海外のオンラインカジノをプレイしている場合とは事情が異なると考えれられます。
ネットカジノカフェの利益構造
ネットカジノカフェについては、「パチンコ「30兆円の闇」 もうこれで騙されない」(溝口敦著、小学館発行、2005年10月20日初版)が詳しいです。
第6章23「フィリピンネットカジノ」が台頭(237ページ~246ページ)によれば、ネットカジノカフェの利益構造は、おおよそ次のようになります(ネットカジノ店を開くg氏への取材から)。
私は、大もとのカジノとライブカジノ店が協定を結んでいたのかと思っていたのですが、そうではないようです。あくまで大もとのカジノとライブカジノ店との間も「カジノ」と「客」の関係にあったことになります。
それから、最後の倍付けについて説明させていただきます(「パチンコ「30兆円の闇」 もうこれで騙されない」242ページから)。
最初の300万円の支払いの後に200万円を支払えば、300万円+200万円×2=700万円=7万ポイントと計算してくれます。
そして、客が100万円(=1万ポイント)をライブカジノ店に払い込んで負ければ、ライブカジノ店は50万円を大もとの店に送金すればよいことになります(50万円送金すれば倍付けで100万円=1万ポイントとして計算してくれるため)。
逆に客が100万円勝った場合は、ライブカジノ店はその場で客に100万円を払います。この時点で、ライブカジノ店は1万ポイント失います。しかし、もともと倍付けで計算してくれていますので、50万円だけ客に持っていかれるだけで済むことになるのです。
これでは実質5割の手数料をカジノが負担することになるのですが、そもそもVIP会員はほとんどおらず、正規のレートで勝負する小口の客が圧倒的に多いからカジノは大丈夫ではないかとのことです。
気になるライブカジノ店の利益ですが、売り上げ1億、粗利5,000万円もあるそうです。オープンは2,000~3,000万円もあればできるそうですから、ボロい商売でしょう。でも、私は絶対に薦めません。
ネットカジノカフェ法律上の問題
問題は、違法か否かです。この件に関しての私見を以下述べさせていただきます。
論点1 「賭博場開張等図利罪ではなく常習賭博罪を適用した。」
まず、刑法はこうなっています。
(常習賭博及び賭博場開帳等図利)
186条 一項 常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。
二項 賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
注目は、刑法186条1項と2項です。よくアングラカジノが摘発される場合は、ほぼ間違いなく刑法186条2項を適用します。なぜなら刑罰が重いからです。
しかし、今回の逮捕では刑法186条1項を適用しています。
おそらく、あくまで大もとのカジノが「賭博場を開帳」しているため、刑法186条2項を適用しなかったのではないかと思われます。
しかしながら、ネットカジノカフェでは店員が、オンラインカジノを介在させて、客と「常習として賭博をした」ため、刑法186条1項を適用したと思われます。
(※「オンラインカジノを道具として利用」という表現にしたかったのですが、道具という言葉は間接正犯を想起させますので、あえて控えさせていただきました。)
そして客には常習性がないため、刑法185条の(単純)「賭博」罪を適用したと思われます。
つまり、日本国内で店員と客がお金のやり取りをしたから違法ではないかと私は考えています。
したがって、個人が自宅から直接ネットカジノでプレイする場合とは、自ずから違うのではないかと思います。
論点2 「ペンタゴノ事件との違いは?」
ペンタゴノ事件とは、1998年2月に起こったネズミ講の事件です。日本人被害者12万人、被害額6億円という巨額のものでした。
イタリアではネズミ講の法規制がないので、胴元は逮捕されませんでした。しかし、日本では無限連鎖講の防止に関する法律違反で、関係者14人が逮捕されています。
つまり、根は刈れなくても枝は刈れるということです。
今回もこのペンタゴノ事件に似たケースと思われますが、ネズミ講の場合は、1人目→2人目→3人目→・・・・・と順々につながっていきます。1人目が摘発できなくても、2人目以降は摘発可能なのです。
これに対してネットカジノでは、胴元と客の2人しかいません。今回のように店員と客が金のやり取りをしたというケースは違法とされてしかるべきかもしれませんが、ネットカジノと客が直接つながっている場合は、ペンタゴノ事件とは異質のように思えます。
なお、上記はあくまで私の独自見解です。他サイトでも同様の見解を採っているところがあるかもしれませんが、私はその正確性を担保できかねます。
やはりオンラインカジノは危ないと思われる方は、足を踏み入れないようにしてください。
(2009.5.5追記)
上記見解を記述したのは、2006年2月です。すでに法学はある程度学んでいましたが、この後さらに研究を深めました。
結論から申し上げれば、日本国でプレイした場合、プレイヤーは違法になります。
必要的共犯ではあっても、必ずしも相手方が可罰性の要件を満たす必要はないからです。
相手方がもし日本国内にいれば間違いなく、プレイヤーは単純賭博罪または常習賭博罪で処罰されます(相手方は賭博開帳図利罪で処罰されます)。
たまたま相手方が海外にいるからといって、プレイヤーに対する可罰性に有無を生じるのは法的安定性を害します。
日本国において実行行為に着手かつ完了し(マウスをクリックした瞬間に着手かつ完了となります)、また違法性阻却事由及び責任阻却事由もないことから、単純賭博罪または常習賭博罪の罪責を問うことができると考えます。
海外で開設されたインターネットのオンラインカジノを利用して賭博をさせたなどとして、京都府警は23日、京都市中京区東木屋町通四条上ルのインターネットカフェ「ゴールドラッシュ」の店員2名を常習賭博容疑で、同店の客2人を賭博容疑で現行犯逮捕した。法務省によると、海外のオンラインカジノを使った賭博が摘発されるのは全国初という。
調べでは、店員2人は同日午後2時5分ごろ、同市中京区内にある同店のパソコンを使ってフィリピンで開設されているオンラインカジノに接続し、客2人に賭博をさせた疑い。容疑者らは客に「違法ではない」と説明していたという。
同店は24時間営業で、フィリピンなどから送信されてくるデータをホストコンピューターで受信。端末11台を使って、客にバカラやポーカーなどをさせていた。1ポイントを100円で売り、ポイントの残高に応じて現金を払い戻す手法だったという。府警は、客の負け分をカジノ開設者と折半するかたちで、利益を上げていたのではないかとみている。
同店は、京都有数の繁華街にあり、阪急河原町駅に近い雑居ビルの2階にある。看板に「オンラインライブゲームカフェ」と書いて宣伝していた。
・野放し状態 解明へ弾み
インターネットの普及でオンラインカジノには、誰でも簡単に参加できる。これまでは野放し状態で、収益の一部が暴力団の資金源になっているとの指摘もあった。今回の摘発が実態解明に向けた弾みになるとも期待されている。
カジノサイトは、主にカリブ海の小国やイギリスの海外領土など賭博が合法とされる地域で開設されている。海外のカジノで日本人旅行者が遊んでも罪には問われない。合法国のサイト開設者もまた、日本の賭博罪で摘発されることはなかった。
しかし、これまで黙認状態だったのは、海外を拠点とするオンラインカジノが複数のサーバーを経由し、賭け金の流れやシステムの立証が難しかったためだ。法務省刑事局は「国内からの参加を一概に合法と考えるのは間違いだ」としている。
また、警察庁生活安全局は「海外のサイトでの賭博開帳行為が裏付けられれば、参加者のほかに、開設者にも賭博罪を適用できる可能性はありうる」とみる。
今回の事件で、京都府警は、インターネットカフェの店員が海外のカジノサイトを利用して客に賭博をさせていた点に着目。店員に常習賭博容疑を、参加した客に賭博容疑を適用した。
オンラインカジノの現状に詳しいノンフィクションライターの溝口敦さんは、「誰もが抵抗感なく賭博に参加できるところに問題がある。リスクが少なかった分、暴力団の新たな資金源にされている疑いもある」と話している。
・背後を明らかに
ネット犯罪に詳しい紀藤正樹弁護士の話 オンラインカジノは不特定多数の人が気軽に参加できるため利用者が急増しており、一日も早く規制しなければならない。最終的には個人のパソコンから直接カジノサイトに接続している利用者を取り締まる必要がある。先は長いが、今回の検挙で一歩前進したことになるだろう。今後は、店とサイトとのつながりなど背後関係の解明を進めてもらいたい。
(2006年02月24日)
asahi.comから引用